先週末、日本社会薬学会第30年会に参加してきました。
久し振りに懐かしい先生方にお会いすることができました。
基調講演で、年会長の津谷先生よりご講演がありました。
テーマは、「社会薬学とドライラボ」
この時はじめて「ドライラボ」という概念を学びました。
薬学部では長年、実験する場=ラボと言う考えが主でしたが、
社会科学的に、薬学に関連する事象を研究することは、薬学において非常に重要であり、
実験をしないラボを「ドライラボ」と呼ぶそうです。
医薬品の安全性を確保する上でも、社会に必要とされる薬学人材を輩出していくためにも、
とても大事な考えであると思いました。
先生のご講演の中で、最も私の興味を引いたのは、
「医薬品の適正使用と合理的使用は異なる」
と言うお話でした。
それが何を意味するのか、すぐに理解できなかったのですが、先生の説明と、自分なりの解釈によると、
薬を適正に使用するということは、薬をガイドラインや適応に応じて、正しく使うということ。
一方、薬を合理的に使用するということは、限られた医療資源を適正に配分する、ということ。
と理解しました。
つまり、例えば、ある病気を治すために、100万円の薬が必要な患者さんがいて、その人に、その薬を投与することは、「適正」です。
しかし、その医療費を使って、1万円で病気が治る人100人を救うことができるとしたら、その選択は「合理的」ではないのかもしれないと言うことです。
医療者は常に、公衆衛生的概念を持って、治療に当たる必要があります。
また、医療資源(医療費や医療人材)は無限ではなく、限りがあります。
なので、我々は、トリアージをしなければならない時もあります。
これは、命を救うことを使命としている私達医療者にとって、非常に辛い仕事です。
患者さん本人やご家族、友人からしたら、その人の命を救うことが何よりも最優先であり、それが「正しい」選択であるからです。
目の前しか見えておらず、その背景にいる沢山の命を見過ごしていないだろうか、
我々医療者は常に自分に問いかけなければならないのではないでしょうか。